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福島県飯舘村で想ったこと

6月14日(火)。

(※注意:今回の記事は釣りとは全く関係がありません)

福島県は南相馬市への日帰り出張。重要度の高い業務で朝からパソコンとニラメッコ状態で集中して準備。そして、福島駅で新幹線を降り立ち、もう10年以上の付き合いとなる福島担当営業Gくんの車に便乗して、一路、南相馬市に向かった。

いつもの南相馬へのルートは仙台駅からが起点となり、最近は高速道路ができたお蔭でサクっと行くことができる。しかし、この日は大昔に辿った懐かしい福島県飯館村を経由するルートだった。
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福島県飯館村と言えば、東日本大震災後に起きた悲しい事故により、現在は『帰還困難区域』に指定されている。飯館村よりは圧倒的に原発に至近の浪江町には高速道路も開通したが、車では通過できても自動二輪では通行不可な現状となっている。

東日本大震災以降、このルートを通ったのは初めてだった。

Gくんはこの道に通い慣れている。そんな彼にも幼子が居て、数年前に郡山の住まいに見切りを付け仙台に移住した。そして、仙台から福島や山形の一部をカバーしている。そのGくんが運転中に突然口にした。

『いま飯館なんですが、このあたりは線量が高いんですよ。田んぼに見える黒い袋は除染した土で、あの辺りはもっと高いと思います』

私自身、初めて見た。夥しい数の黒い袋が置かれる田んぼ。その光景は延々と続いた。
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福島県に出入りする弊社スタッフは、皆、簡易線量計を所有している。これはPolimasterと言って、定価は15万くらいする代物(実売価はもっと安いようだが)。つい先日に校正に出したばかりだと言うが、0.1μSv/hという数値を表示していた。ちなみに、道路脇にあった線量計表示値は0.5μSv/hだった。試しに車の窓を開けて線量計を30秒くらい外気に触れさせてみたが、数値はさほど変わらなかった。線量計のプローブ位置によって、数値も大きく異なるのであろう。
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ちなみに、Sv(シーベルト)は放射線量の単位であり、生体の被ばくによる生物学的影響の大きさを表す単位である。東京大学の中川恵一先生によると、人体に与える影響は100mSvの被ばくで『がん』が原因で死亡するリスクは最大約0.5%上昇し、野菜嫌いの人や受動喫煙と同程度だと言われる。運動不足や塩分の取り過ぎは200~500mSv、喫煙や毎日3合以上飲酒した場合は2000mSv以上の被曝に相当し、たばこや飲酒による発がんリスクは被ばくと比べものにならないほど高い、とのことである。

『0.1μSv/h』・・・この数値は大きいのか? 

これに関して私は専門家ではないのでわからない。ちなみに、ラドン温泉近くの数値はもっと高く0.3~0.5μSv/h程度。ブラジルの一部の地域は10mSv/年(1.14μSv/h)を超える。普通に東京の我が家で一年間暮らしていても、自然界や食物から受ける被ばくは2.4mSv/年(0.2μSv/h)と言われる。私は仕事で飛行機を多用するので、通常人の何倍も被ばくしているはず。ちなみに東京・ニューヨーク往復で0.2mSvくらいだと言われている。おまけに私は、仕事では時折、直接的にX線を浴びていることもある(もちろん、その際は防護服を着ているが・・・)。

さて、飯館村の線量値0.1μSv/hを年間に換算すると、 0.1*24*365=876μSv/年=0.876mSv/年、となる。ニューヨークに4回出張すれば同等の被ばく量となる。道路脇の表示値(0.5μSv)を換算したとしても約4.4mSv。それでもブラジルの一部の地域よりは圧倒的に少ない。

しかし・・・・、飯館村は帰還困難区域に指定されているため、人が完全に消さっていた。道路沿いに建つ比較的新しめの家屋にも人の気配は皆無。写真に写る高校は廃墟と化していた。まだ新しめの建物の蕎麦屋は完全にシャッターが閉まっていた。人が住まなくなった家屋の庭には、葵に代表される6月の花が綺麗に整然と咲き乱れていた。この花の開花を楽しみにしていた住民を始めとする皆様の悔しさは甚大なものに違いない・・・

南相馬市に抜けるまでに八木沢峠を通る。峠から見る山々は鮮やかな深緑色を呈し、山間に流れる渓は青々とした水を湛えていた。車窓からしか眺めていないが、車から降りてしばらく眺めていたら、きっとライズの幾つかも確認できたかもしれない。

車窓から見ているだけでも美味しそうな野草がたくさん自生しているのが見えた。大きく葉を広げたタラの樹も、ここ数年、誰からも芽を摘まれることもない・・・

峠の途中に一匹のサルを見かけた。道路脇にのんびりと佇んでいたが、サルの家族はどうなっているのだろう? 人間が山に入らなくなり伸び伸びと生活している反面、放射線の影響が次世代にどのように現れているのかは定かではない。

チェルノブイリの事故の後、周囲の野山からは人間が立ち去り、野生動物の生態系が元に戻ったと言われる。地表近くに住む野鼠は独自の進化を遂げ、放射線に対して抗体の強い種に進化したとNHKのTVで観たことがある。その一方で、空を飛ぶツバメは、翼の長さが左右異なる種が多かったと聞く。

福島の事故は人類史上最悪の事故。人間が起こした事故の被害を被るのは全生態系だが、それを被害と感じているのは人間だけで、実は野生動物はむしろ伸び伸びとしているのかもしれない・・・

八木沢峠の渓で悠々と泳いでいるヤマメやイワナはどうなのだろう。左右対称の綺麗な鰭ピンの状態で元気に泳いでいて欲しい。不謹慎かもしれないが、既に釣人の存在すら忘れた渓魚は、いとも簡単に釣れてしまうかもしれない。しかし、まだ永らく釣人が近づくことはないだろう。

福島県飯館村を通過してみて、脳裏にぐるぐると廻ったことを書き記してみた。これだけダラダラと文章にしておきながら実は全く結論はない。そう簡単に結論が出る問題とも思えない。

そもそも、本来は楽しくあるべき釣りブログにこんなことを書く必要すらないだろう。しかし、あの場に居合わせて色々な光景を目の当たりにしてしまった私としては、村民の気持ちを想うと何かを発信せざるには居られなかった・・・というのが正直な気持ちである。

極めて難しい問題に違いないが、我が寿命が終わりに近づく頃までには、この渓で伸び伸びとロッドを振ることができる日が訪れる“兆し”のようなものが見えてくることを願って止まない。

(追記)

何の偶然か・・・、この文章を書き終えた頃にこんなニュースが発表された。あまりのタイミングの良さに、私自身が大いに驚いている。何より、住民はさぞや喜んでいることだろう。まさに復興に向けたスタートだと思う。

『福島・飯舘村の避難解除正式決定=政府
 政府の原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)は17日、東京電力福島第1原発事故の影響で福島県飯舘村の大半の地域に出ている避難指示について、来年3月末に解除することを正式決定した。副本部長の林幹雄経済産業相は、閣議後の記者会見で「避難指示の解除はゴールではなく復興に向けたスタートだ。解除後も政府一丸となって復興に向け取り組んでいく」と話した。』






今回の文章を書いていて、同時にJCOの東海村臨界事故が想い出された。推定で16-20Svを瞬間的に浴びた患者様は不幸にも亡くなられた。一般的に7Svで99%の人が死亡すると言われる。

随分前の話だが、前述の中川恵一先生のご講演を横浜で拝聴する機会があった。中川先生は、事故に遭われた患者様が亡くなられるまで、毎日詳細な観察を行われた。全国の放射線技師、すなわち医療従事者を対象とした会だったので、その患者様の変遷の様子の一部始終が写真で紹介された。

入院直後の患者様は一見は普通の人間だった。しかし、既に放射能を浴びて細胞核が破壊され細胞分裂ができなくなっていた。そして、細胞が寿命を終えた時点から障害が始まり、皮膚がすべて無くなり大火傷のような真っ赤な状態になり肉体から血が滲み出て来る・・・ 輸血を繰り返して生命維持を図ったが、結局、事故から83日目に亡くなられた。

この事故についてはNHKのTV番組でも取り上げられたようだが、残念ながら私は観ていない。中川先生がご紹介された写真の数々は決してTVでは放映できない内容だと思われるので、このような写真を見る機会を得た人間は少数だと思われる。幸か不幸か私はその少数派に属しており、だからこそ、『被ばく』、に関する問題には人一倍関心が高いのかもしれない。仕事でX線に関わっている、ということ以上に・・・

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重い記事にも関わらず、最後まで読んで頂けた方々にお礼申し上げます。ありがとうございました。




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プロフィール

Green Cherokee

Author:Green Cherokee
東京都武蔵野市在住。S40年7月生まれ。
元より雑魚(Zacco)が大好きでちょくちょくミャク釣りを楽しんでいましたが、ひょんなことからFly Fishingに転向。安近短の里川で2011年夏よりZacco Fly Fishingをスタート。
釣りだけでなく野草やキノコも大好き。身近な里川の四季の変化を愉しみつつ、水面や地面に眼を走らせています。
愛車は、2000年式の緑色のJeep Cherokee。極めて非経済的な車で、あちこちガタが来ていますがそれでも偏愛しており、他に魅力的な車が見つからず困っています・・・

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