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プノンペンに出向いた理由

カンボジアはプノンペンの完結編。

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そもそも、なぜカンボジアに行ったのか・・・。その前に、カンボジアの悲しい歴史を語る必要がある。

私は日本史にも世界史にも全く詳しくなく、むしろ、疎い側の人間なのだが、今回、カンボジアの医療をサポートする側の立場になったこともあり、にわかに色々と学んでみた。

1960年代半ばのポルポト政権によって行われた大虐殺・・・。原始共産主義を目指したポルポトは、いわゆる政権の邪魔をするかもしれない予備軍まで皆殺しにした。それは、ただただ普通に生活していた知識がある人、ましてや、外見上で知識がありそうに見える人=めがねを掛けている人・・・に至るまで。当時、海外に留学していた優秀な人々も、『国の発展のために貴方の力が必要』と騙して国に戻させて、そして皆殺しにした。一部の賢い人達が文字を読めない振りをして何とか生き延び、大虐殺の実態が明るみにされたと言う。

その悪魔の時代に医者の大部分が殺されてしまい、その後、カンボジアには医者が極少になったとされる。

そんな政権が長続きする訳もなく時代が終わり、その後、首都プノンペンを始めとする都市圏は大きな発展を遂げ、アンコールワットに代表されるような観光資源もあり、海外からの観光客の多くが訪れるようになった。そして、時代と共に街は更に発展した。

しかし・・・、医療だけは時代の進化から完全に取り残されてしまった・・・と言われている。カンボジアの富裕層は自国の医療を全く信用しておらず、最低限に見積もっても年間21万人の患者がタイ、シンガポール、ベトナムに治療のために訪れている。ちなみに、彼らは渡航費も含めて完全自費での治療となる。このようなMedical Tourismは自国の医療の発展を妨げてしまう。

一方でカンボジアの一般市民はどうか・・・? ろくな医療も受けられず病院の前で死んでいく人が多いと言われている。今回、空港往復の道中で様々な街並みを垣間見ることができたが、路地裏は未だ舗装もされておらず、そこには慎ましくも貧しい生活の姿があり、医療を受ける資金面に乏しいであろうと思われる人々もたくさん居た。

そんな医療後進国に対して、日本政府のバックアップを受けて一つのプロジェクトが立ち上がり、そして、2016年秋に一軒の素晴らしい病院が設立された。カンボジアの富裕層のみならず、一般市民への医療提供も目的としている。

東京都八王子市に本部がある医療法人グループによる、『病院まるごと輸出』というコンセプトの元、プノンペンの病院立ち上げのために高い志を持ったチャーターグループが派遣され日々奮闘されている。皆様のご活躍の様子を実際に拝見し、本当に感銘を受けた。

病院が操業開始して間もなく、頸動脈に狭窄のある患者が見つかり、外科手術もしくはカテーテル手術にするかの検討が為され、カテーテル手術の方針が決まったと連絡を受けたのが12月25日(月)。そして、初手術日が12月29日(金)であることを知らされた。ちなみに、医師も放射線技師共に、導入された新装置の使用に全く慣れていない状況・・・

そのことを知らされた当時、私は室蘭に出張中。こちらも新規オープンした病院に導入された新装置を用いた初手術の日だった。出張中に即効でプノンペン往復のフライトを予約し、12/27(火)の夕方に何とか室蘭での仕事を終えて一旦帰宅し、翌朝(慌ただしい割にはしっかり釣竿をスーツケースに仕舞い込んで・・・)、一路、プノンペンに飛び立ったのだった。

頸動脈狭窄とは、頸動脈が狭くなり脳への血流が乏しくなってしまい、様々な症状が出る病気。外科的にはプラーク(血管を狭くしている原因の、いわば粥状のコレステロールの塊みたいなもの)ごと血管の内膜を剥離するが、カテーテル治療ではステントと呼ばれる金属製の筒を留置して血管を広げることで血液の流れを整流させる。

今回、このカテーテルによる手術が、実はカンボジア国内で初めての出来事だった。すなわち、カンボジアの医療発展の歴史の大きな一歩に、幸運にも立ち会えたことになる。

私は医者ではないので私自身が手術する訳ではない。しかし、医師は私が作った画像を見て病変を把握し、必要な部位を計測して留置するデバイスのサイズを決定する。ましてや、手術中に装置にトラブルが生じたら手術自体が行えなくなる・・・ 執刀医には及ばないにしても、それなりに重要な役割を担っている。

装置の設定が悪かった・・・、装置の使用に不慣れで治療に失敗した・・・、なんてことは絶対に許されず、何としても成功させなければならない。手術成功のために万全の体制を作り、且つ、最大限のサポートを・・・、これこそが、私がカンボジアに出向いた理由に他ならない。

そして、手術は成功裏に終了し、医師と病院スタッフは笑顔に包まれた。当日夜は病院スタッフ数名との祝勝会で、夜遅くまで楽しく盛り上がることができた。

さて、せっかくの機会なので、少しだけ病院の雰囲気をご紹介させて頂きたい。
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歴史的に大きな一歩を達成する直前の手術室の光景。あえてモノクロにさせて頂く。
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共にサポートしたバンコクから来た我が相棒。彼女はASEAN各国(タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、インドネシア等々)を毎日のように飛び回っている。
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とても綺麗な病院ロビー。奥には素敵なカフェがある。
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ラウンジのような患者待合ロビー。
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ご興味がある方は、是非こちらの動画もご覧頂ければと思う。病院のオープンセレモニーの様子。今回の執刀医だった院長の御姿もたくさん写っている。



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12/30(土)のこと、仕事の全行程を終えて、タクシーに乗り込みプノンペン空港に移動。渋滞で2時間近くかかったが、これまた気の良いドライバーでずっとおしゃべりを楽しむことができた。

ビールがこの上なく好きという彼と、ビールの話で散々盛り上がっていたら、思わずお土産に持ち帰りたくなってしまい、空港近くの小さな店に立ち寄ってもらった。店員に英語は全く通じず、やむなく自分自身で小さな店を見渡すも、どう見ても箱のビールしか売っていない。24缶入りで約1000円。時間も無かったので、思わずその箱を抱えてタクシーに急ぎ足で戻った。

程なくして空港に到着。その箱の中から10缶だけ自分用に抜いて、残りのビールは、ドライバーへのチップにすることにした。

GC:色々と親切にしてくれてありがとうございました。このビールの箱、御礼のチップ替りです。
Driver:僕は長年ドライバーをやっていますが、ビールでチップ払うお客様は貴方が初めてです・・・
GC: ・・・(笑)  6$相当だからそんなに悪くないチップでしょ~♪ 楽しんでくださいね。

お蔭で、彼の脳裏には私の記憶がしっかりと刻まれた模様。再会を約束して、握手と共にお別れした。

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帰宅は大晦日になる。近代的なプノンペン空港にてホッと一息付き、独りで祝杯。やっぱりモヒートには白いラムの方が似合うようだ・・・(笑)
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(この記事をアップした1/26は、なぜかカタールの首都であるドーハのホテルに居る。自分自身、いま何故ここに居るのか、何とも理解し難い状況に絶句せざるをえない・・・)





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Comment
カンボジアの医療背景、とても勉強になりました!
ポルポト政権がカンボジアの医療にも多大な影響を与えていたなんて、全く知りませんでした。

ICAstent成功おめでとうございます。
臨機応変で素晴らしいお仕事をされているんですね!!
本当にお疲れ様です。

カタールにはオイカワはいないと思いますが、アラブの魚いっちゃってください~(*^_^*)飛行機トラブルだったらすいません。。
やまねったさん、こんにちは。
悲しい歴史が去った”ずっと後の今”を生きる人達も苦労しているんだな・・・という現実を目の当たりにすることができました。
パリからの飛行機が遅れて、カタールでの乗り継ぎ便に間に合いませんでした・・・ お蔭で昨夜未明に帰国する羽目に・・・ (T_T)
ところで・・・、やまねったさんは医療関係者でしたか!! どこかでお会いしていたりするかも・・・ですね・・・ (^^ゞ
素晴らしいお仕事をされてますね!
思わず読みふけってしまいました。パリで会ったカンボジアからの亡命青年(ポル・ポト政権から辛くも脱出できた、今では立派な初老かな)どうしてるだろう。
O川のほとりに住む者ですが、ブログを楽しく拝読させていただいています。
kawasanさん、こんばんは。初めまして。
ポルポトが留学していたパリに、カンボジア青年が亡命した・・・何とも因果なものを感じます。いつの日か再会できると良いですね。
O川のほとりにお住まいだなんて裏やまし過ぎます!! 都心近くなのに奇跡的に美しい湧水豊富な川・・・この川の素晴らしさをもっと多くの人々に知って頂きたいと思っています。ついつい隣のK川で釣りばかりしてしまいますが、四季折々のO川の素敵な光景も散策しつつブログにアップして行きたいと思います!!
素敵なコメントを頂けましたOさんへ
とても嬉しいコメントを本当にありがとうございました!! ご希望通りに削除させて頂きましたが、今後も是非ともよろしくお願い申し上げます。お会いできます日が来ることをとても楽しみにしています!!
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プロフィール

Green Cherokee

Author:Green Cherokee
東京都武蔵野市在住。S40年7月生まれ。
元より雑魚(Zacco)が大好きでちょくちょくミャク釣りを楽しんでいましたが、ひょんなことからFly Fishingに転向。安近短の里川で2011年夏よりZacco Fly Fishingをスタート。
釣りだけでなく野草やキノコも大好き。身近な里川の四季の変化を愉しみつつ、水面や地面に眼を走らせています。
愛車は、2000年式の緑色のJeep Cherokee。極めて非経済的な車で、あちこちガタが来ていますがそれでも偏愛しており、他に魅力的な車が見つからず困っています・・・

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